歴戦の戦士といえど、何でも屋としてはまだまだ駆け出し、まずはお客様の信頼を得るところからと言うわけで、お電話いただければどこまででも参上しますが身上のストライフ・デリバリーサービス兼何でも屋、本日の依頼はアイシクルロッジまでの出張配達にモンスター退治。目的地までの行程は長く、その上ちょうど雨季だったせいで道悪、正直気のりはしなかったが、仕事を選り好み出来るほど余裕があるわけではなく、そもそも(自称)元ソルジャーたる肩書きを活かして商売をするためには他人の敬遠するような依頼を率先して引き受けなければやっていけない。
雨に打たれ、ただでさえ憂鬱な往路、アイシクルエリアに渡る為の定期便が増水で運休していたせいで、わざわざグラスランドの旧知のチョコボファームまで取って返し、チョコボを借りて海を渡った。ぬかるみと雨(そして雪)に気力を削がれ、仕事云々よりもミッドガルとアイシクル地方との往復で疲れた。帰宅も予定より3日押しだ。
そんなこんなで、むしろ精神的にげんなりして帰ってきた久しぶりのミッドガルに恋人と我が家、狭いスラムの安普請アパートだがマイホームには変わりない。扉をあければいつものように暑苦しい抱擁――もなく、ただいま、というクラウドの声におかえりの返事すらなかった。
別に抱き締めてもらいたかったとかそういうつもりはなかったが、この冷淡なお迎えには少々拍子抜けした。人間わがままなもんである。
真っ暗で電気も付いていない部屋に、なんだよ寝てんのか薄情なやつ、と思ったが時間はまだ宵の口。寝ているという時間でもない。
嗅ぎ慣れた家の匂いに、肩に背負っていた愛刀の重さを感じて、バスターソードのホルダーを外した。負荷から解放されて楽になった肩を鳴らし、バスターソードをもう一度持ち上げた所で水を流す音がした。トイレか、と納得する。
傾いていた機嫌も持直し、ならばとりあえず一杯、と酒を求めて台所に向かった所にザックスがいた。
まったく気配がない所に突然現れた(ようにクラウドは錯覚した)から、ぎょっとした。
キッチンの奥の壁に凭れるように片手に煙草を持ったザックスは立っていた。
闇に浮かびあがる魔晄の瞳は焦点があわずどこか虚空を漂っていたが、その異質な蒼さにクラウドは思わず身体を強ばらせる。
動揺したのか、僅かにバランスを崩したクラウドの足の先に、開きっぱなしだったサイドボードの扉があった。膝を強かにぶつけ、ぼおんと大袈裟な音が響く。
その音に、遠くを見ていたザックスの瞳がふとクラウドを見た。ザックスの魔晄の瞳もクラウドと同じ、夜目が効く。なんでこんな所開けっ放しにしてんだ、と文句を言おうとした所で、さっきまで漂っていたザックスの視線が定まりクラウドを認めた。ザックス、と言おうとして、声が擦れてうまく言葉にならない。
ザックスがゆったりとした動作で壁から背を離す。短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
紫煙が狭いキッチンの一区間に充満していて、その煙の塊がザックスごと一歩クラウドに迫った。換気扇壊れてんのに、どうしてわざわざそんな狭い所に入り込んで煙草を吸っているのか。煙草はベランダで吸う事にしようと言い出したのはザックスだろうがと、言いたい事は沢山あったのだが言葉が出てこない。ザックスの大きく骨張った手が、クラウドの頬に添えられた。
デジャヴ。
「おまえ…酔って」
「クラウド」
と囁いて問答無用に唇を塞がれる。クラウドが突然の暴挙に目を見開いて、いよいよ言葉を失ったが、例えキスをされなかったとしても、ザックスの平素よりも艶のある夜の(ぶっちゃけてしまえば盛っているときの)声に、ただいま、とすら応えることすら出来たか、怪しい所だった。
振り払うとか顔を背けるとか言う極々初歩的な自衛手段すら取れず、キスされてザックスの舌が口内を犯しはじめるまでクラウドはされるがままだった。さすがに舌が入り込んで来た辺りで、やっとこさ我に返って胸板を押し返したものの、時既に遅し。
片手にバスターソードを持っていたのも不味かった。
いっそそれで殴ってやればよかったのだが、想像よりもずっと熱い出迎えに溶かされて、空いた手で力ない抵抗をするので精一杯。角度を変えて深くなるザックスのキスに、クラウドがよろめく。
必死で縋り付くクラウドの腰をザックスの腕が抱いて支えた。先程クラウドが引っ掛かったサイドボードの扉を足で閉じ、クラウドを寄り掛からせる。
離した唇から細く糸が引いた。それを追うようにもう一度、クラウドに噛み付く様なキスをする。戯れに近いそれは、クラウドの薄い唇を甘噛みしてすぐ離れた。ザックスの蒼い瞳に射られて、後頭部がじくじく甘く痛む。
「…クラ」
「ぶぇーーくしゅっ!!」
「……え?」
あらぬ方向から響いた豪快な嚔に、惚けながらも咄嗟に持っていたバスターソードでザックスの頭を殴ったクラウドの判断は正しかった。一瞬でも躊躇していれば闖入者にばっちり濡れ場を見られていただろうし、臨戦態勢に入ったザックスを素手で止めるなんて到底不可能だっただろうから。
がっしゃん、と嚔より一回り大きな音がして、その闖入者は呆気に取られた顔をした。
せまいキッチンの入り口で向かい合い、クラウドはやっと自分の家にいるもう1人の存在に気付いた。
「ああ?なんだぁ?クラウドじゃねえか!」
「……シ、ド」
クラウドに殴られ、キャスター付きのキャビネット(これも普段はベッド横にあるはずなのだか)を巻き込んで派手に転倒し床にのびているザックスを気にも掛けず、酒臭い息を纏って現れた赤ら顔のロケット村伝説のパイロットは、よぉ帰ったかと一升瓶を掴んだ右手を上げた。

――せめて瘤の一つでもできたのなら、クラウドももう少し優しかったかもしれないが。
いい按配にアルコールがまわりご機嫌なシドは、ミッドガル復興に技術者不足を嘆くリーブの要請で応援に来たらしい。ついでにとふらり立ち寄ったセブンスヘブンで、これまたクラウドの帰りを待って一人寂しく飲んでいたザックスと意気投合し、ここに場所を移してクラウドの帰宅を待っていた…のはいいのだが、部屋は荒れ放題、酒瓶と空き缶が転がり、出すもの出しっぱなしの状態で、スナック菓子とジャンクフードの油でそこらじゅうてかてかと輝いていた。クラウドは眩暈を覚えてザックスを睨んだ。
「来るなら来るって、先連絡しろよ」
「いや悪ぃ悪ぃ。思い立ったが吉日ってな。ティファに聞いたらクラウドももう帰ってくるって言うからよぉ」
「予定が狂ったんだ」
家にあった酒を粗方飲み尽くされ、こればかりはとシドから取り上げ死守したウータイの米酒を小脇に抱え、へべれけにはアルコール与えてりゃ充分だと床に転がっていた酒瓶をかき集めちゃんぽんにしてシドのグラスに注ぐ。
辛うじてテーブルの上に残っていたつまみをかき集め、油分でべとべとになった布巾を端に追いやって、とりあえず酒盛りの態勢を整えた。
「北の方まで行ってたんだって?」
「仕事でな」
「何でも屋ってのも難儀だなぁ、繁盛してんのか?あぁ?」
「ぼちぼち、だな。一人穀潰しがいるから、かつかつには変わりないが」
「ひでぇ言われ様…」
黙々と課せられた皿洗いをこなしていたザックスが、主夫も立派な家庭内労働だと抗議するが、クラウドは黙殺した。クラウドを庇って死に掛けたせいかザックスの身体は未だ本調子でない。クラウドの様にバイクも持っていないから、遠方の仕事、きつい仕事はクラウド担当。一家の大黒柱的役割をクラウドが担っている。
それ自体は構わないのだが、疲れて帰ってきた所に酔って襲い掛かられたのだ。どの口が言うかとクラウドの言い分は正しい。
バスターソードのグリップでの一撃、常人なら昇天してもおかしくないクラウドの殴打を受けても、一瞬後にけろっと復活したザックスは、部屋の惨状にキレたクラウドにもう一発お見舞いされた。
生死を彷徨いかねない攻撃に、さすがに酔いも冷めたザックスは、酔った勢いで床にぶちまけたジャンクフードやらスナックを箒でかき集め、シンクに溜まったグラスの後片付けに追われていて、完全に蚊帳の外だ。
穀潰しなぁ、とシドが笑う。
「いや、まぁ楽しくやってんならいいんだけどよ。ところでティファとはどうなんだ、ん?」
ぶ、と飲んでいたビールを吹き出しかけ、クラウドは固まった。あわててザックスに視線を走らせるが、ザックスは何食わぬ顔でグラスを濯いでいる。愛ゆえになんて鼻歌で歌いながら上機嫌で、聞いていない様子にほっとする。
…シドたちにとってザックスは、死んだと思っていたクラウドの友人、に過ぎない。クラウドがザックスと再会したのが、もうそれぞれが自分の居るべき場所に帰った後だったから、ザックスとクラウドが一つ屋根の下暮らしだしても、特別交流があったわけではない。クラウドかザックスと再会した現場に居合わせたのはティファだけだった。
だから皆知らない。旅の間にクラウドの口から語られた神羅時代の話から、ザックス=とにかく人のいい奴、との印象はあったがそれだけだ。まさかその優しさが、クラウドに対する愛情から来ていたなんてシドたちに知る由はないし、クラウドもそこまで突っ込んだ事は話していなかった。思い出していなかったというのもある。
そこで、今はザックスと付き合っているから、と言ってしまえばいいいのだが、それができないのがクラウドの性格。しかし一方で、胸を張ってザックスを恋人だと言いきれない自分に罪悪感も感じてしまって、我ながら厄介だと思う。
そんな葛藤から、思わず「ティファ…なぁ」なんて曖昧に返してしまって、怪訝な顔をされてしまった。
微妙なシドの赤ら顔を見ながら、ザックスとの事を何故今更照れる必要があるんだろう、と自覚はありながら思わず話を逸らしてしまった。
ザックスが聞いていなかった事に少しほっとしながら。


「シド寝た?」
一足先にベランダで一服していたクラウドは、漸くやってきた相方を一瞥して声を掛けた。ベッドに転がしといた、とザックスが答えて、クラウドに並んで煙草に火を付けた。片付け終わったか酔っ払い、と聞くと、すみません、と素直に頭を下げるザックスが面白くて、クラウドは笑った。
「シドがさぁ」
「ん?」
「いらんレコード、箱で持ってきてくれてるから、後で見てみろ。おまえの好きそうなのあったぞ…S&Gとか」
「へぇ」
「シエラさん、だっけか、奥さん。なんか酒控えろとか言われてるらしくてな。レコード整理も奥さんにさせられたらしいんだけど。久しぶりにこっちきて羽のばしたかったんだと」
「それで人んちの酒飲み尽くす勢いで…」
なにが思い立ったら吉日だと、呆れて脱力する。大方リーブの応援と言うのも半分真実半分…といったところか。しかし案外シドが尻に敷かれるタイプだったのかとか、余計な所で感心していると、ザックスの腕がクラウドの腰に回る。
「さっきの続き」
ザックスの低い声に囁かれてどきりとした。ベランダの落下防止策に括り付けてあった灰皿代わりの空き缶に煙草を落とす。
「風邪ひくぞ、ばーか」
とザックスの頬に鼻を付けて笑うと、キスで返された。
空を覆うプレートがなくなって、スラムの夜は結構冷える。ザックスの体温が夜風で冷えた身体に心地いい。気分がよくてそのまま彼の腕に触れると、食器洗いの時に濡れたのか袖口がひんやり湿っていて、とても冷たかった。中入る?と聞けば、ザックスが苦渋の表情で無理…と呟く。
「なんで」
「シドの鼾がうっせーの…」
ああ、とそういえば旅の間も部屋割りで揉めたなぁと懐かしく思い出した。歯軋り鼾の騒音に、寡黙なヴィンセントまでが苦言を呈し、シドには有無を言わせずケットシーと纏めて部屋に放り込んだ覚えがある。
狭い家の中だ、ガラス戸こしさえ届くシドの鼾は、室内では尚のこと、さぞ煩かろう。
「クラウドさぁ」
「…なに?」
キスの合間に、少しあがった息を整えながらザックスを見上げる。
「いまだにひた隠しにしてるよな…俺のこと」
「ひた隠しって程じゃないけどな」
軽く伸びて、こつんと額と額をあわせた。大分縮まったものの、未だ歴然と存在する目線の落差に、それでも腹が立たなくなったのはいつからだろうか。一般兵をしていた頃は、コンプレックスの塊だった。だとすればこの体格差を受け入れたのは再会した後か。その姿勢のまま、ザックスは少し躊躇した後ぽつりと呟いた。
「否定、しなかっただろ。ティファとのこと」
聞こえてたのか、とクラウドは目を見開く。おくびにもそんな様子を見せなかったから驚いた。
好いた惚れたにいい加減恥ずかしがる歳でもないし、この際恋人はザックスですとぶっちゃけてしまっても良いような気はする。それでもいつもあと一歩のところで踏み出せないがクラウドのクラウドたる所以だ。おまえのことだしわかっちゃいるんだ、と呟くザックスは、まるでクラウドではなく自分に言い聞かせている様だった。急にそんな事を言い出したのは、シドの結婚話を聞いたのも一因か。
「きっかけがなぁ…ないんだよな」
「きっかけって」
今日のあれはきっかけじゃなかったのかとザックスに呆れられながら、違う、とクラウドは反論した。
更にきっかけどうこう言うなら、再会して一緒に住みはじめたのが最大のきっかけだったんじゃ、とザックスは至極もっともな事を思う。
「いつ日陰者から卒業できるんだろうな…」
「そんな大袈裟なもんかよ」
遠くを見て寂寥感溢れる呟きを洩らすザックスに冷たく突っ込むクラウドだが、こんな事をザックスに言わせてしまう程の自分の言動の不誠実さに、胸の奥に後ろめたさも感じないわけではない。――ザックスの言い分もわかるけど、と言うのが本音の部分。
今仕事忙しくてそれどころじゃないし、なんて言い訳がましい言葉をつい口にしてしまうのもそんな後ろめたさゆえに、だ。
「次聞かれたら」
頑張る、と言いながら腕を絡めるクラウドに、その次がいつくるのかとか、頑張ることなのかなぁとかザックスは苦笑する。
「おまえが嫌なら良いけどさ。好きな事に変わりねぇし?」
「どっちだよもう…」
クラウドが恥ずかし紛れにいつもより積極的にキスを求めて、ザックスがそれに応えて腰を引き寄せた。
「なぁ…ここでやっちゃっていい?さっきの続き」
「よくない」
あっさり一蹴されても、ちょっと入れさせてくれるだけでいいから、後舐めてくれたらすぐいくからなぁなぁとしつこく擦り寄ってくるザックスの頭を拳骨で殴って撃退する。
頭を押さえたザックスに馬鹿力、と睨まれるが意に介さない。
「当たり前だ。中にシドいるんだぞ」
「しかもベランダだしな」
「わかってんだったら…!」
クラウドの言葉を遮って唇を塞ぐ。服の下をまさぐり、腰砕けになったクラウドの耳元でザックスが優しく囁くのだが、その内容が「パンツおろすだけでいいから」だからもう呆れるしかない。睨んで見ても、何日かぶりに触れられて潤んでしまった目では凄みも何もあったもんじゃない。
だって久しぶりだもん、と口元を歪めるザックスに、そんな台詞免罪符にもならん、…と言えればクラウドの勝ちなのだが。
口腔を犯し深くなるザックスのキスを受けながら、途中ジーンズのファスナーを下ろすザックスの手も視界に入ったものの、まぁいっかと流されてしまった。
身体を柵に預けザックスの首に腕を回し愛撫を受け入れていたクラウドは、いつのまにか例の大きな鼾が止んでいるのにも全く気付かなかった。


身体が痛いのはソファで寝たからだ。アイシクルエリア〜ミッドガル間強硬日程に疲れて帰ってきて、酒を飲んで、ついでにセックスまでして、しかもザックスではないが「久しぶり」だったし、いつもと趣の異なるシチュエーションにらしくなく燃えてしまった。
かろうじてシャワーは浴びたものの、ベッドはシドに占領されている。ふらふらしながらなんとかソファにたどり着き横になった所で意識が途切れた。お陰で身体がだるい。
コーヒーとベーコンエッグの芳ばしい香りと、すっかり高く登った太陽光が眩しくて薄く目を開けると、キッチンにおさんどんに精を出すザックスの後ろ姿。ついでにシドが持ってきてくれたレコードの音。
「あれ、シドは?」
身体を起こして、ぎしぎし軋む全身を解しながら尋ねると、朝からどうしてそうテンションが高いのか、満面の笑みのザックスと目があった。
「今さっき帰ったよ」
「……もう?」
「もう、ってもう昼前なんだけどな。なんか急に奥さんの顔見たくなったんだと。邪魔して悪かったって」
立ち上がり用意されたコーヒーに口をつける。
「ふーん……って、え?」
ザックスの言葉が寝ぼけ頭では一瞬理解出来ず、然し何かおかしいぞと察したのか身体の方が先に固まった。ぽかんとザックスの顔を見たクラウドに、ザックスはにやりと一瞬人の悪い笑みを浮かべると、夫婦円満だなーと嬉しそうに言う。
先喰っとけよ、と出されたベーコンエッグが冷めるよりもクラウドの身体の芯が凍るのが早かった。いや、そんな、まさか、と頭のなかで恐ろしい想像がぐるぐる周り、突然血が沸騰したように顔が熱くなった。
ザックスは上機嫌でレコードに併せて鼻歌(いとしのセシリアときた)を歌っている。
「ザック……!!」


「シドさんびっくりしてましたけど」
出されたお茶で唇を潤し、いやー、やっぱティファさんの入れてくれたお茶はおいしいですわーとリーブが笑う。
「今さらですよねぇ、ほんま」
「今さら、よねぇ」
同調してティファも苦笑する。あのクラウドの、ザックスを見る目は完全に恋人のそれだ。再会の瞬間に立ち合ってその決定的な表情を目の当たりにしたティファと、仕事上クラウドと連絡を取り合っているリーブに言わせれば今更何をいわんかや。開店には少し早い、セブンスヘブンのカウンターで茶のみ談話。話題の中心はもっぱら、この前這う這うの体でロケット村に逃げ帰った飛空挺親父。
「ティファさんも何でゆったらんかったんですか」
「何が?」
独特のイントネーションにつられそうになって、ティファは口元に手をやった。
「いや、今日はいかんほうがええよって」
うーん、と答えを探すティファの顔は悪びれた様子もない。
「飲みなおそうって誘ってたのはザックスだし、別にいいんじゃないかしら」
くすりと笑って、仕込みの続きしようかなーと立ち上がったティファの後ろ姿を見ながら、苦労すんなぁ…とリーブは呟いたが、さて、誰に対してのものだったのか。